三倉山って言うと7月中旬のニッコウキスゲが咲き揃う頃が一番旬な時期であるが、8月の盛夏の時期はまた違った構成種の花園が現れる。
稜線は日差しを遮る高木がなく暑さが予想されたが、吹き渡る風は涼しく、快適な夏山登山が楽しめた。

【 8/3 三倉山(1888m) 福島・那須連峰 】
駐車場~大峠~流石山~五葉の泉~大倉山~三倉山(往復)

混雑する那須連峰にあって裏那須と呼ばれる三倉連山は比較的静かな山旅が楽しめるエリアである。
しかも大峠から大倉山に至る伸びやかな稜線はミニ飯豊とも称されていて、北関東随一とも言われる広大なお花畑は必見である。

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三倉山は今回で4回目の登山となるが、関東のNYAAさん、福島のみどぽんさん、そしてmaronnさん、TOMさん、ichicoさん、うめさんマスさんと一緒の賑やかな登山となった。

観音沼森林公園の大駐車場で待ち合わせ、車2台に乗り換えて野際新田の林道最終地点を目指す。
そこから斉藤山と舟鼻山を望む。
大川沿いの平野部は霧に覆われている。
こんな日は上昇気流の影響で一時的に山の上はガスに覆われる可能性が高い。
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昨年は大雨の土砂崩れの工事で通行止めになっていた箇所も、今年は完工して通れるようになっていた。
この林道を最初に通行したのは約20年前だったが、当時と比べて格段に整備された走行しやすいダート道になっている。

最初の駐車場で車を止めた。
無理をすれば一番奥の駐車場まで行けるが、車を傷める可能性があるので全ての登山者がここに車を止めている。

荒れた林道を約15分程度歩くと一番奥の駐車場に着く。
そこには写真のような石標が建っていた。
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石標には松川街道と書かれていたが、ここから大峠を越えて板室に出る往還は江戸時代に南山松川通りと呼ばれていた。
元来は日光街道(南山通り)が表街道であったが、天和3年(1683年)に地震のために日光側の戸板山が崩壊して川がせき止められ、五十里村が水没してしまった。
そこで江戸廻米のための道を確保するために、幕府の出資で会津藩は新道の開削に乗り出した。
そして松川通りは元禄8年(1695年)に完成したのである。
会津藩主の松平正容も参勤交代でこの道を通行している。
しかしこの街道は開通後わずか9年で脇街道の扱いになってしまった。
山間を通るために道の破損が激しく維持管理が大変だったためと、南山通りを遮断した五十里湖に舟運が開始された点がその理由である。
五十里湖を経由するほうが近距離で積雪の影響も少ないのは良く理解できる。

林道終点から大峠までは緩登で1.5kmの距離。
以前は石畳が残っていたが、今は荒れてガレた道の様相になっている。

お地蔵さんが佇む大峠に着くと一気に高山的な風景に変わる。
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傍らに雨滴が残るハクサンフウロの花が咲いていた。
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大峠は戊辰戦争の折、館林兵と黒羽兵により混成一支隊が大砲八門と共に会津に進出したと伝えられているが、今は当時の街道的な雰囲気は一切残っていない。

峠から流石山までは標高差300mの急な登りとなる。
しかし冬場の強風と積雪量の多さから、この一帯は高山植物の宝庫となっていて、花々を見ながら登るとそんなに辛く感じない登りである。

ヒメシャジンは咲きはじめ。
後一週間したら満開になりそうだ。
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一番見たかったのがシモツケソウ
東北の山でこの花が群生しているところは少ない。
でも未だに蕾の花が多く、咲きはじめと言った感じであった。
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タテヤマウツボグサは随所に群生していた。
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コバギボウシの濃い紫の花の背後に茶臼岳が見えている。
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最初のコブを登って緩登になったところで休憩。

そこでマスさんお手製のバジル入りのバターケーキをご馳走になる。
バジル風味のケーキは初めて食べたかも? とても美味しかった。
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時計回りに弧を描く稜線の果てに三倉山が見えている。
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この頃から上昇気流が激しくなり、どんどんガスが湧き上がってきた。
展望に優れた稜線歩きが持ち味の山だが、そんな時は花を眺めながら歩く楽しみがある。
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盛夏に強烈な色彩が似合うクルマユリ
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フラワーアレンジメントのような三等三角点がある流石山に到着。
展望が開けた山頂であるがガスで何も見えない。
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南側が井戸沢の源頭部になった稜線を歩く。
登山道から離れていて写真は撮れなかったがキンコウカが咲いていた。
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曇り空の暗いトーンの中にマルバダケブキが浮かび上がる。
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右手に五葉の泉と言う池が現れる。
石楠花などの低木に囲まれた静寂境で、オタマジャクシが沢山泳いでいた。
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咲き残りのニッコウキスゲ
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笹に覆われた稜線を登りつめると灌木に囲まれて展望がない大倉山に着く。
ここで休憩してマスさんお手製の竹と言う羊羹をいただく。
黄身餡と餡子が優しい甘さで美味しかった。
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大倉山から方向を北西に変えて三倉山を目指す。
激しかった上昇気流も収まって、ガスが飛び鋭い三角形の三倉山が見えてきた。
メンバーは手前の三角点峰に登っている。
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西側に連なる分水嶺の稜線
道のない魅惑の稜線であるが、忠実に辿れば男鹿山塊に至る。
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1854m三角点峰より見た三倉山
見た目はきつそうに見えるが、登ってみると苦労なく登れる。
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三倉山(1888m)山頂で記念写真。
ここで昼食を食べてゆっくり休んだ。
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最初は車を麓の音金地区にデポして周回する事も考えていたが、車回収のために麓で待っている人の事を考えて止めて往路を戻る。
しかし天候が良くなる一方なので、登りで見られなかった景色が堪能できるのも楽しい。

三倉山の肩から眺めた大倉山
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那須連峰のほとんどのピークが一望できる。
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三角点峰への登り返し。風がなくここは暑苦しい。
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石楠花やヤマグルマの照葉樹が生えている大倉山頂稜
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南西側に男鹿山塊が霞んで見えている。
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緑濃い三倉山を振り返る。
三倉沢が目もくらむような角度で切れ込んでいる。
この沢を遡行した記録があるのが信じがたい。
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大倉山の下りから流石山を望む。
全行程15kmの内、往復12kmも展望の良い稜線を歩けるのは素晴らしい。
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キスゲ小沼と沼原調整池。
左手の山は白笹山。
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流石山は一番高山的な姿をしている。
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茶臼岳がはっきりと見えてきた。
下に三斗温泉が確認できる。
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ミヤマシシウドと背後に遠くなった三倉山。
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旭岳は今でも道があるのがろうか?
以前夏場に登った時はアザミの藪で痛くて大変だった覚えがある。
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那須連峰の最高峰:三本槍岳を正面に見ながら大峠に下る。
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稜線では涼しい風が吹き抜けて余り暑さを感じなかった。
しかし大峠まで標高を下げると流石に暑い。

少し休憩してから樹林帯の中を駐車場まで下った。
林道沿いにはヤマオダマキの花が咲いていた。
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近年は登山者が多くなったと聞いていたが、表那須と比較すると別世界のような静かな山を楽しめた。
今回は人数は多いが、足の速い人も多いので動画を撮影していると置いていかれ、後で追いつくのが大変であった。
懸念した夕立もなく、帰路は新甲子温泉で入浴し、白河ラーメンを食して帰路に着いた。


動画です