八幡平の西側に位置する焼山には16年前に一度登った事がある。
その時、東北道を走行中に当時の愛車のミッションが抜けて走行不能となってしまった。
金成ICの手前だったので、惰性で走行しICのゲートまで走れたが、結局その車を手放すことになってしまった。
知り合いのディーラーの方が代車を届けてくれて、代車で焼山に登ったのだが、そんな意味であまり印象が良くない山となったのである。

【 9/15 焼山(1366m)秋田・八幡平 】
後生掛温泉~国見台~毛せん峠~焼山山荘~名残峠~焼山~鉱山跡~湯ノ沢~澄川地熱発電所~ベコ谷地~後生掛温泉

久しぶりに焼山に登りたいと思ったのは、マスさんが以前から行きたいと言っていたのが大きい。
今回は同じく焼山に登りたかったmaronnさんを含めて3名でのパーティとなった。

でも行く前に左手薬指を負傷して医者に行ったり、不注意から車の左バックミラーを破損してしまったりと、不穏な事が自分の身に起きていて嫌なかんじだった。
こういう時は細心の注意が必要である。

霧の深い岩手路を走行して滝沢ICを過ぎると、急に岩手山が左車窓に見えてきた。
空気が澄んでいるのでとても近くに見える。

アスピーテラインの見返峠でトイレ休憩。
朝早いので駐車場は無料である。
そこから岩手山が見事なスカイラインを描いて眺められた。

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 南西遥かに鳥海山の姿が見える。
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そして目指す焼山を見下ろす。
八幡平エリアの山であるが、まったく独立した火山の様そうを呈している。
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後生掛温泉の駐車場ではなく、アスピーテラインに沿った大駐車場に車を止める。
そこから温泉宿まで少し歩く。
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直ぐに焼山に登らないで全長2kmの後生掛自然研究路を歩く。
ここでは噴湯、噴気孔、噴上泉(オナメモトメ)、マットポット(泥壷)、湯沼、泥火山などの火山活動の衰退期における現象が観察できる。

特に泥火山の規模は日本一で、高さ1~2mのものが8個連なっている。
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折角遠くまで来たのだから、この後生掛自然研究路は必見である。
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一番の見どころは大湯沼で、径100m×150mの楕円形の形をしている。
泥湯が沸騰し噴煙が立ち上がる沼の奥に国見台のピークが見える。
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再び後生掛温泉に戻り、そこから焼山を目指すが、この登山道が滅多にない変わった代物である。
何と自炊棟の建物の中を通過していくのだ。
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小沢を渡って、そこから少し急坂を登ると森閑としたブナ林の歩きになる。
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やがてオオシラビソとブナの混生林になるとエゾオヤマリンドウやアキノキリンソウが咲く道になる。

国見台の標識のある場所からなだらかな八幡平の姿が一望できる。
先ほど歩いてきた大湯沼も確認できた。
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国見台のピークは登らずに、山頂北側を巻いて毛せん峠に取り付く。
毛せん峠で大休止。
低いガンコウランやイソツツジ、シラタマノキ、そしてハイマツの緑が毛せんを引きつめたように見える。
その直ぐ北側に栂森のピークがあり、道が伐られているので登ってみたが、毛せん峠と変わらない景色しか見えず、山名板もなかった。

次の小さなピークの登りから焼山を望む
巻雲が秋本番を思わせる。
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焼山山荘(避難小屋)は倒壊の恐れがあるので使用禁止になっていた。
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小屋の手前に比較的大きな火口湖がある。
優しい風が湖面を吹き抜けていく。 
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付近はちょっとしたお花畑になっていてアキノキリンソウやエゾリンドウが沢山咲いていた。
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少し登った地点から火口湖と避難小屋を振り返る
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鬼ヶ城を呼ばれる岩場がある峰はる溶岩円頂丘(トロイデ)であることが地形図からも判断できる。
岩塔が突き出る風景は正に鬼の城を思わせる
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そこから西進すると荒涼とした火山地形が眼前に広がってくる。
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焼山を代表する火口湖:湯沼の景観。
北側に3つの噴気孔があり、シューシューと吹き上げる不気味な音が聞こえてきた。
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歩いてきた栂森(毛せん峠)から中央火口丘の鬼ヶ城を振り返る。
焼山とは焼山と東の栂森(1,350m)と南の黒石森(1,231m)を外輪山とする複雑な二重式火山となっている。
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焼山の火山活動は仙台管区気象台火山監視・情報センターにおいて「静穏に経過しており、レベル1に相当する。噴火の兆候は認められない」としているが、昭和24年の8月に空沼(旧火口)の4か所で噴火があり、厚さ0.8m、長さ200m程度の泥流を流出し、近年では平成9年の8月に火山性微動の発生とともに空沼火口で水蒸気爆発が発生している。
地球レベルの時間の尺度では現在も活発に活動している火山と言えるであろう。
 
名残峠に着くと森吉山が意外に近くに見えていた。
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北西方面には平頂の柴倉岳の後方に竜ヶ森が確認できる。
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ガレた斜面を登っていくと焼山の頂稜に出る。
三叉路になっていて右が玉川温泉方面。
山頂は左に少し入ったところ。
以前来た時は藪に覆われてこれ以上登れなかったところだ。

山頂への道にはナナカマドの実が赤くなっている。
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二等三角点の鎮座する焼山山頂
周りは灌木に取り囲まれていて展望はほとんどない。
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再び眼下に見える名残峠まで下って、そこで昼食にした。
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後生掛自然研究路の売店で買ってきた温泉黒たまごが美味しい。
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帰路はベコ谷地を経由して後生掛温泉に戻る周回コースを採る。
別なパーティに湯ノ沢に下るバリェーションルートを教えてもらったので、湯沼を周回するそのコースを歩いてみた。

結構多くの人に歩かれているルートらしく、踏み跡はしっかりしている。
どうもこのルートは後生掛温泉から焼山に至る旧コースであったらしい。

湯沼の奥に中央火口丘の鬼ヶ城があり、そこの火口である空沼が大きく口を開けていた。
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途中の鋭峰から焼山を振り返る。
荒涼とした噴火口と、笹の緑に覆われた焼山のコントラストが素晴らしい。
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石垣が積まれた平坦な場所が1952年頃に、荻原鉱業が湯沼まで索道を通し、湯沼で硫黄を採掘していた鉱山の痕跡である。以前は建物が建っていたようで木材が散乱している。
当時この硫黄鉱山では約200人が働いていたそうであるが、過酷な労働条件だったであろう。
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涸沢を渡って少し登ると避難小屋から分岐した湯ノ沢への道に合流する。
(このルートは火山性ガスによる事故の可能性が高いため、あくまで自己責任の下で行動して欲しい。特に無風状態の時はガスが沈殿するので細心の注意がひつようである。)

湯ノ沢へ下って行く道ではナナカマドの紅葉が始まっていた。
背後に見えるピークは栂森の三角点峰である。
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湯ノ沢では天然の野湯が楽しめる。
至る所で温泉が湧きだしているらしい。
実際この時に出会った年配のご夫婦は、2時間も野湯に入っていたと言っていた。
湯温は43度くらいで滝壺が正に湯船になっている。
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湯ノ沢を何度か渡渉し、右に少し急坂を登ったところで湯ノ沢を振り返る
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ネットで調べてみると湯ノ沢は沢登りの対象になっている沢であった。
幾つかの大きな滝もあり、遡行の最後に沢全体が温泉になっている異色の沢登りができるので面白そうだ。

登りきると精鉱された硫黄を運んだ索道跡と思われる道にでる。
この道は栂森の北麓を大きくトラバースしていて、ほとんどアップダウンがない。

オオシラビソが卓越した森を延々歩いて、機械音が聴こえてくると澄川地熱発電所の施設が左手に見えてくる。
そこから少しの距離でベコ谷地に飛び出た。
木道の設置されていない大きな湿原で、エゾリンドウが沢山咲いていた。
正面に見える山は八幡平。
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湿原の入口でマスさんお手製のレモンケーキをいただいた。
酸味が利いてとても美味しかった。
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最後は深いブナの原生林を下ってアスピーテラインに出た。
効率良く周回できるこのコースはとても面白かった。
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帰路は後生掛温泉に浸かって山旅の疲れを癒した。
今まで変なジンクスを考えて避けていた山であったが、それが払しょくできて本当に良かった。

GPS軌跡です。(クリックで拡大) 

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動画です。