23日の秋分の日は静かな山を求めて山形・秋田県境の丁山地の奥深くに位置する男加無山に登ってきた。
7年前に登っているが、マスさんが行きたい山の一つだったし、過去4回登って山頂に達したのは1回しかない難峰なので、久しぶりに行ってみたくなった。
【 9/23 男加無山(997m) 山形・丁山地 】
登山口~八敷代川渡渉点~加無沢出合~胎内くぐり~挽割~第一露岩~第二露岩~第三露岩~男加無山(往復)
私的な指標として山形県の摩耶山・倉沢コース、沢渡黒伏、そして今回登った男加無山を人に頼らないで登れれば上級登山者の仲間入りが出来ると信じている。
どのコースもルートファインディングや確かな歩行技術、読図力、そして岩登りの総合力が必要だからだ。
今まで男加無山に4回登って登頂に失敗している状況を説明すると、
第一回目はGWの未だ残雪が深い時期に登って、加無沢沿いのデブリを越え、ブナの原生林に入ったところで完全に残雪で道を失ってしまった、
当時はGPSや現在のようなマップの登山情報が一切なく、2万5千分の一地形図には道型が記載されていなかった。
それでも女加無山の東面岩壁基部まで登ったが、上部から頻発するブロック雪崩に恐れをなして撤退したのである。
第二回目は秋の紅葉時期にsakaさんらと登ったが、ヒメコマツの生えた第一露岩を越えたところで右手の岩場のテラスで行き詰ってしまった。
尾根まで戻って道を探すと、微かな踏み跡が笹薮の中に続いている。
そこを少し登ったところで大粒の雨が降ってきて、これ以上岩場を歩くのは危険と判断して撤退した。
ようやく山頂を踏めたのは単独で登った三回目である。
第一露岩から少し登った地点でこの時も藪で道が定かでなくなったが、忠実に尾根を詰めていくと所々で踏み跡が現れた。
第三露岩にザックをデポして笹薮を漕いで山頂を目指すと、藪に囲まれた三等三角点を見つけた。
そして7年前は女性3名を含めたメンバーで登ったが、はやり岩場のテラスに行く道から分岐する正規の登山道は完全に藪に埋もれていた。
藪に慣れていないと辿れないほどの薄い踏み跡を登って第三露岩まで着いたが、藪漕ぎで時間がかかり山頂までは行けなかった。
この時、藪の中に延々と釣り糸を延々と張って上り下りしていた非常識な登山者がいて、テグスに身体やザックが引っかかり非常に苦労した。
そこまでしないと藪山に登れない人は、道のない山を登る資格がないと知るべきである。
因みに、朝日連峰の合地峰に登った時も、同様に笹薮に延々とビニールテープを伸ばしていた非常識な登山者がいたが、途中で切れて灌木に絡みついたビニールテープに絡まってしまい、身動きができなくなり、ナイフでテープを切ってやっと体が自由になったこともある。
野生動物の場合はナイフを持っていないので、テープが絡まってしまったら致命的であろう。
加無山一帯は加無山県立自然公園に指定されており、原始のままの自然が残る貴重な山域になっている。
男加無山と女加無山の双耳峰をなしていて、すぐ東に位置する甑山と非常に似た関係にある。
今は廃校になった大滝小学校のところから林道に入り、途中の分岐は左にとると加無山の登山口に着く。
現在は途中の杉林が伐採作業中らしく、ところどころ大型トラックの轍が深いので、普通車での走行は苦労するであろう。
林道終点の少し手前の両側が広くなっていて、左手に登山口の標識が立っている。
林道の右手にも何やら意味不明の看板があり、今年の6月に草刈りがされたと記載されていた。

登山口周辺にはツリフネソウが沢山咲いている。

少しだけ杉林をくだり小沢を簡単に渡渉する。
その先に八敷代川を渡るが、以前あった丸太の橋は無くなっていて、現在は石飛びで渡渉しなければならない。
雨で増水したら登山靴の中を濡らさずに渡るのは難しいであろう。
こんな事を予想して今回はスパイク長靴を履いてきた。

沢沿いの平坦な道をしばらく進む。
地元のキノコ狩りの方とすれ違ったが、キノコはほとんど採れなかったらしい。
ぺしゃんこのハケゴを見ると空振りだったことが分かる。
道沿いにはシソ科のカメバヒキオコシの花が沢山咲いていた。

陽の光が差し込む場所はミゾソバの花が目立った。

平坦な道が途切れて河原に出ると、右岸を高巻くようになる。
この取り付きの場所は草付きで足場が悪いので注意が必要だ。

天然杉の巨木が生えている場所がある。

八敷代川を下に見て、山腹をトラバースするような道が少し続く。
道が細いので川への滑落に注意を要する。
やがてブナの原生林へと導かれる。
この付近は加無沢の出合となっているが、沢から離れているので出合は登山道からは見えない。

林床にキバナアキギリが群生していた。
花をよく見るとサルビアの仲間というのが納得できる。

加無沢が近づくと正面に険しい山容をした女加無山が見えてくる。

テンニンソウは秋の沢筋を登ると必ず咲いている花だ。

加無沢を渡渉した地点に咲いていたノコンギク。

加無沢の左岸を登っていくと対岸に大きなスラブ壁が見えてくる。

標高が低い山とは思えない迫力あるスラブは千畳岩と呼ばれている。
イヌワシの営巣地があるという噂もあるが、登攀した記録も見当たらないので実際はどうなんだろう?
でも過去2回、この付近でカモシカに出会っている。

二度ほど対岸に渡り返して登って行くと、ブナやトチノキ、カツラの巨木が散在する深い森の中を登るようになる。
この付近は加無山の内院と言っても過言ではなく、原始の気に満ちた貴重な自然が残る素晴らしい場所である。
私がこの山を何度も訪れる理由は、この原生林の存在が大きい。
広い展望よりも、深い森の逍遥を愛するようになると、登山観も熟成されてきたと言えるかもしれない。

森の中の一点が明るくなったように感じる白い花の色が目立つサラシナショウマ。

ブナの倒木に腰掛けて休憩する。
少しだけ上空の視界が開けたその場所から、目指す男加無山の壮絶な岩壁が垣間見えた。

登り始めると単独の男性登山者二名と相次いでスライドする。
この日出会ったのはたったの三名だけ。
地味で玄人受けする山なので、登る度にほとんど人に会わない。
やがて道は大きく右に迂回し、女加無山の東面岩壁の基部を辿る道に入っていく。

この付近は以前より道が荒れてしまった。
毎年の雪崩により道形が消失している場所もあり、外斜してステップの薄い急斜面のトラバースは滑落の危険があって慎重さを要求なれる。
胎内くぐりの岩場はロープが設置されて以前より通過しやすくなった。
写真は帰りに登って通過するところを撮ったものである。

その直ぐ先に八幡大神の洞穴がある。
奥行きのないオーバーハング状の洞穴なので危険を冒して岩場を登る価値はないであろう。

上部を眺めると凝灰岩質の岩壁が遥か上まで続いている。

前夜の雨で足元が滑り易くなっている急斜面トラバースを終えると、ロープが断続的に出てくる急登に変わる。
この急坂を登り切ったところが女加無山と男加無山の鞍部の挽割である。
西側に刈り払いされた日正鉱山跡からのコースが下っているが、余りに急斜面過ぎてロープなしに降りるのは危険である。
このルートは道の整備状況が歩く、沢筋を歩く箇所も多いため、歩く場合は道に精通した先達の案内が必要であると言う。
南側に聳える女加無山への道はない。でも登る人もいるようで薄い踏み跡がついていた。
挽割から北に男加無山を目指す。
出だしから急な尾根道となる。
ヒメコマツの生える突き出た岩場のところは展望が良い。
東側に男甑山と女甑山の特徴的な双耳峰が見えている。

過去の登山ではこの少し先から猛烈な藪漕ぎを強いられて苦労した。
しかし岩場のテラスに向かう分岐のところから笹刈りが行われていて、赤布も付いている。
こんな事は初めてで、順調に高度を上げていくことができた。
第二の露岩のところで今まで景色が見えなかった分を取り戻すほどの展望が開ける。
北側には第三露岩のあるピークが見えるが、ここからは危険個所が多い登りとなる。

登ってきた尾根を振り返ると女加無山が非常に尖がって見えている。
晴れていれば北西に鳥海山の姿が見えるのであるが、この日は雲がかかって直近の丁岳も見えなかった。

第二露岩にザックをデポしてカメラだけ持って山頂を目指す。
ほぼ垂直の場所を木を頼りに下り、細い尾根筋を辿ると、沢の源頭の窪状の急斜面を登るようになる。
足元は泥と岩が混じって非常に滑り易い。
横に生えた低木を掴んで登るしかなかった。
窪を抜けるとスラブの真上のヤセ尾根に出る。
足元から一気に切れ落ちていて、ここも木を頼りに慎重に登った。
男加無山の西面岩壁が望まれるが、以前この岩壁に登攀ルートがあったと聞いたことがある。

第三露岩に着く。
東側は麓の樹海まで一気に切れ落ちていて、岩場でフリクションがあまり利かないスパイク長靴なので慎重に越えた。

再びほぼ垂直の斜面を下り。

小さなアップダウンの末に男加無山に山頂に登りついた。

小さなアップダウンの末に男加無山に山頂に登りついた。
山頂の周囲はブナに囲まれ展望は全くない。

空身で登ってきたので昼食は山頂ではとれない。
直ぐに踵を返して往路を戻る。
第三露岩から登ってきた山頂を振り返る。
全然冴えない山頂だと分かる。

足場が滑り易い窪の下りは登りよりスムースに下れた。
掴む木が目線の高さにあったからであろう。
第二露岩まで下ってコンビニで買ってきたサンドイッチを食べる。
登山道上に陣取って食事をしているが、時間的に誰も登ってこないし、人気のない山なので静かなものである。
ザックを背負って帰ろうと思ったら丁岳にかかっていた雲が飛んで山頂が見えていた。

左側が随所で切れ落ちた稜線を下っていく。
しかし挽割までは道が乾燥しているので問題はない。
そこから女加無山の岩壁の基部を通過するのが、足場が悪く大変であった。

簡単には登らせてくれない山である。
しかし地味な山であるが、登った達成感は他の高山を凌ぐものがある。
GPS軌跡です。(クリックで拡大。)
動画です。

コメント
コメント一覧 (8)
丁岳周回や男加無山は、以前から興味はあるのですが、単独行ではやっぱり怖そうです。ブナの原生林にはキノコがありそうですが、端境期なのか、不作なのかよくわかりませんね。
丁岳や甑山は比較的整備されていますが、今回の山は原始のままの姿を色濃く残しています。
この日は二組のキノコ狩りが入っていましたが、ツキヨタケばかり目立っていて端境期のようです。
新しい本には超難度の山に改定されているのでしょうかねー?
みどぽんさん同様、一人じゃいけない山です。
草刈りされていれば比較的簡単なのですが、藪が酷いと俄然難しい山になります。
尾根筋が複雑なのでルーファィ能力も必要ですし、窪状の登りは滑落の危険があります。
しかし難易度は確か星二つですね。
近年整備されて歩きやすくなったそうでうが、難易度は高いですね。
難易度は高いですが、草刈りされて山頂まで立てる確率が格段に高くなりましたよ。
女性を連れていく場合は補助ロープは必要でしょうね。
まして今年は熊出没が多いので、見通しの悪い場所は緊張します。
行きたい場所でしたので、大変興味深く見せて頂きました♪
確か二回目に行ったとき、プロのキノコ狩りの男性が熊に会ったと逃げ帰ってきたことがありました。
本当に深い森を歩く山なんです。
道刈りされた今がチャンスですが、複雑なルートもあって、山慣れた方と一緒に行った方が良いでしょうね。