21日・土曜日、朝日連峰の北端に位置する離森山に登ってきた。
夏道の存在しない山なので、積雪期限定のルートを利用した。

【 3/21 鍋森(1258m)から離森山(1302m) 山形・朝日連峰 】 
国道112号線・月山第一トンネル南口駐車場~白土谷沢左俣左岸尾根取り付き~1073m峰~1150m峰~1163m峰(北沢山 )~1195m峰~鍋森離森山~鍋森~1195m峰~1163m峰(北沢山 )~1150m峰~白土谷沢左俣~国道112号線・月山第一トンネル南口駐車場

朝日連峰の障子ヶ岳の北側にある紫ナデから、月山の装束場に至る長大な稜線には、旧国道112号線が大峠で交差する以外夏道が存在しない。
冬季に山形の村山盆地から西の彼方を眺めた時、真っ白い屏風を連ねた様な、この連嶺が指呼できるが、山名を同定できる方は地元の人でも少ないであろう。
南から順にその主脈の山名を挙げると大桧原山~高倉山~枯松山~赤見堂岳~鍋森~北沢山、そして大峠の北側に湯殿山が聳えている。

今回は鍋森から一本西側に派生した支脈の最高点:離森山を目指した。
山名の由来も主脈から離れた位置に聳える山だからであろう。
離森山から更に北に大らかな稜線が伸びているが、標高1124mの三足一分山を最後に急激に標高を下げ、その山裾を月山湖に落としている。

離森山は大峠から主稜線を南下する場合、片道10km以上の長丁場となるが、国道112号線・月山第一トンネル南を起点として、白土谷沢左俣左岸尾根を経由した場合は、片道7km弱と充分日帰りが可能な行程となる。
しかし白土谷沢は例年4月の声を聞くと沢床の雪が開いてしまって通行不可能となってしまう。
故に厳冬期から3月一杯に往復可能な時期限定のルートと思って間違いない。

朝5時、未だ陽が昇る前の暗い時間に月山第一トンネル南口駐車場に集合した。
ご一緒するのはmorinoさんマロ7さん、maronnさん、ナカシィさんマスさん、そして福島から野村ツアーさん、地元の山形からモンキィさんの7名である。

朝の気温はマイナス2度。
カンジキを使う必要がないほど硬い雪なので、各自10~12本爪のアイゼンを付けて出発した。

まだ日が差し込む前の白土谷沢にシャキシャキとアイゼンの爪音を利かせて登って行く。
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離森山は2008年に単独で一度登った経験がある。
その時は誰にも会わない静かな山旅が楽しめた。
私がこの山に拘っている理由は、以前読んだ西村寿行の『荒涼山河風ありて』の作品の舞台が、この離森山にあった事である。
話の内容は荒唐無稽だが、実際にはあり得ない山中のシーンがとても強烈に記憶の中に残っている。
それ以来、自分にとって離森山は一度は登ってみたい山の一つになっていた。


右俣を見送り、左俣に入ると、前方の山肌に朝日があたりオレンジ色に輝き始めた。
 
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左岸尾根へは急な窪状を登って行く。
この取り付き以外は斜度がきつ過ぎてとても登れない。

白土谷沢左岸尾根:891m独標の西側に乗り上げると、雪面が割れてグライドし始めた山肌が迫力ある姿で見えていた。
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振り返ると、ブナの木々の隙間に湯殿山(左)と姥ヶ岳、そして月山が左から順に並んで見えている。
まだ朝の斜光なので、陰影があり立体的に見えた。
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展望が得られるブナ混じりの急な尾根を快適に登って行く。
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日本有数の豪雪地帯である朝日連峰の厖大な積雪量が分かる風景だ。
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大きな雪堤には未だにクラックがほとんどなく、踏み抜きの心配がなくて自在に登っていける。
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このブナの原生林に触れた登山者は少ないと思う。
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1073m峰から1150m峰に繋がる雪稜。
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1073m峰から月山を眺める。
写真で見るより至近距離にあるので、凄い迫力に感じる。
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湯殿山の左手に目を移すと品倉山が見えている。
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まるでスキー場のゲレンデを彷彿させる広大な雪稜を進む。
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1150m峰の登りから振り返った月山
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1150m峰で休憩する。
ここで鍋森から旧112号線の大峠を結ぶ稜線上に乗った。

そしてこれから登る鍋森(左)と離森山の姿が初めて目に飛び込んでくる。
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1150m峰の直ぐ南側に位置する真っ白い円頂の1163m三角点峰(北沢山)
その左手に赤見堂岳が姿を現した。
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北沢山から眺めた赤見堂岳
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鍋森がようやく近づいてきた。
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南東には山形盆地を挟んで蔵王連峰が霞んで見えている。
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1195m付近を進む。ガスに巻かれるとリングワンデリングしてしまいそうな広さである。
左手奥に以東岳の姿が見えてきた。
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早朝はぼんやりとしか見えていなかった鳥海山も徐々にはっきり見えてくる。
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鍋森の登りから振り返ると、月山の西面の爆裂火口も見えていた。
手前のなだらかなピークは1194m峰。
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離森山から北に派生する支脈の北端に三足一分山がある。
空の部分に一筋の線が入っているが、それは日本海の水平線だ。
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西側に灌木が繁茂している鍋森の山頂に着く。
ここで初めて南側に位置する、大朝日岳など朝日連峰の主稜線が望める。

西側には南斜面が切れ落ちた1250m峰と、その左奥に離森山が見える。
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夕方まで歩くつもりなら赤見堂岳まで登って、大井沢に下ることも可能な感じであった。
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鍋森の山頂で大展望を眺めながら、マスさんお手製の和菓子『宝石箱』を頂く。
イチゴ味の水羊羹をういろうで巻いているので、とてもジューシーな最高に美味しい和菓子だった。
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三角形の1250m峰の山頂には登らず、右肩を巻いて行く。
左手背後に以東岳が見えている。
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西側から眺めた鍋森
潅木が生えたいがぐり頭の山容で、東側から眺めたような白い優美な姿とは全然違う。
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北側の小沢源流部の雄大な斜面は、山スキーを駆ったら最適の場所と感じる。
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逆光に輝く1250m峰の斜面。
ここから離森山の稜線までは、野球でも出来そうなほど広い雪原が続く。
小沢を遡行した記録を見たことがあるが、そこは池もある湿原地帯のようだ。
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まるで鏡餅を思わせる山容をした離森山が近づいてきた。
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多少クラックが入っている雪堤に注意しながら山頂を目指す。
大分遠ざかった月山を背景に最後の急坂を登る。
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湯ノ沢岳から母狩山までの稜線を眺めながら山頂直下を登る。
とても標高が1000mに満たない連嶺とは思えない。
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たどり着いた離森山の山頂は、視界を遮るものが一切ない360度の大パノラマが広がる。
特に湯井俣川の支流:北ノ沢越しに眺める朝日連峰の大観には、誰もが感嘆の声を上げた。
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大朝日岳、中岳、そして西朝日岳と続く朝日連峰の巨峰群。
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朝日連峰の北の重鎮:以東岳
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手前に八久和川へ壮絶に切れ落ちる灯明岩を従えた、魅惑的な山容の高安山
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赤見堂岳は見る角度のよって少しずつ山容を替えている。
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雪崩地形が顕著な摩耶山のアップ。
ここから見ただけでも、東面の倉沢コースが尋常ではないルートであると理解できる。
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そして八久和ダムのダム湖が眼下に見えている。
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メンバー全員で記念写真
微風の穏やかな山頂でのんびり景色を眺めながら昼食をとった。
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離森山から往路を戻る。写真は1250m峰のトラバース地点。
天気の良さに少し雪が柔くなってきたが、稜線上はアイゼンのみでも充分歩けた。
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鍋森の山頂には戻らずに、北側を巻いて通過。
一分のメンバーは尻セードを楽しみながら下る。
1150m峰でまた休憩した後、途中から白土谷沢左俣を下ることにした。
枝尾根の下りの途中で沢の源頭部の雪庇を眺める。
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標高を下げてくると雪が柔くなって、ツボ足では歩行が酷いので、各自ザックに付けていたスノーシューやカンジキを装着した。

この日の雪質は少し柔らかいザラメなので、湿雪表層雪崩の危険性はない。
また急な雪面ではクラックが入って、雪がグライドし始めているが、全層雪崩を起こすほど滑っている訳ではないので、沢筋を下っても危険性は低いと判断した。

でも流石に小さな沢とは言え、朝日連峰の沢である。
広い沢筋を下っていくと、次第にV字谷の様そうに変わり、夏には滝場になっているところも出てきた。
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下りながら次はどんな風景がでてくるかが楽しみになってくる。
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朝方、尾根上から見えていた雪面にクラックの入った斜面が現れた。
夏なら相当大きな滝がありそうな斜面である。
ここは唯一の危険地帯なので、各自速やかに通過する事を指示する。
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後二週間もしたら、この斜面は壮絶な底雪崩の現場になるのであろう。
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上部の雪塊は落ち切ったようなだが、デブリの落ちていない場所を直線的に下った。
かなりな急斜面なのでスノーシューの方々は苦戦していた。
やはり春先の雪山ではスノーシューは使えないと感じた。
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ここを過ぎると沢筋は広くなり、朝方尾根に取り付いた窪状の下部に着いた。
そこから月山第一トンネルの建物は近かった。

駐車場に戻ると、湯殿山方面にバックカントリーで入山していたパーティが帰り支度を急いでいた。
志津ではなく、この場所から湯殿山を目指すパーティは結構いるが、離森山方面に入山するパーティは稀である。
今回は天気とメンバーに恵まれ、一日誰にも会わない静かな雪山が楽しめた。

帰りに水沢温泉に入って汗を洗い流し、寒河江の福家で美味しいワンタンメンを食べた。
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メンバーの皆さん、とても満足していただけて案内した甲斐があった山行であった。

GPS軌跡です。(クリックで拡大)
hanaremori


動画です。