残雪期、朝日連峰マイナー山三部作?の最後を飾るのは、地元の岳人に人気の高い赤見堂岳である。
夏道の無いこの山は2002年4月に馬場平経由で単独登山を行ったのが最初であるが、当時は登った記録がほとんど見られない山であった。
しかし近年BCの隆盛とともに、山滑りに向いている山ゆえ、登る人が大幅に増えたように思う。

【 4/12 石見堂岳(1287m)から赤見堂岳(1446m) 山形・朝日連峰 】
国道112号線(月山新道)大越川橋手前の駐車場~786m峰~868m峰~980m三角点峰(双滝山)~1011m峰~1133m峰~石見堂岳~1355m峰~赤見堂岳~1327m峰北~1216m峰~馬場平~1126m三角点峰(中嶺)南~785m峰~607m三角点峰(下桧原山)~大桧原川~大井沢桧原地区

赤見堂岳はちょうど2年前の4月に小桧原川左岸尾根を忠実に辿って、石見堂岳を経てピストンしたので、未だに記憶に新しい。
個人的にはこういったバリェーションルートは連続して登らない主義なのであるが、今回はすばるぅさんに連れていって、と頼まれていた事もあって、赤見堂岳を登るために一番インタレストグレードが高く安全なコースを選んでみた。

朝5時半、道の駅にしかわにメンバーが集合。
今回ご一緒するのは初めてお会いするrockieさん、そしてモンキィさん野村ツアーさんナカシィさんすばるぅさんの5名。
集合場所では雲っていたが、これは前日の雨の影響で低層の雲が発生していると判断。
おそらく入山地点は晴れていると予想していた。

全員の車で下山口の大井沢桧原地区、寒河江川対岸の広い駐車地まで行く。
ここで車2台をデポし、入山口の国道112号線(月山新道)大越川橋手前の駐車場まで乗り合わせて移動する。

急な法面に積もった雪をキックステップで足場を切って私が登り、車道西側のブナ林に入る。
 
ここで月山新道を写真に納めようとデジ一眼を取り出すが、そのついているレンズを見て愕然としてしまった。
何と七ツ森で花の撮影に使ったタムロンSP90mmマクロレンズを付けっぱなしにしていたのである( ゚Д゚)
何時も使用している高倍率ズームレンズは家に置き忘れていて、仕方なくこの日はデジ一眼の90mm中望遠レンズと、何時も動画撮影に使っている高倍率ズームコンデジを使い分けねばならなくなった。
しかしデジ一眼の描写力を見慣れていると、何とも塗り絵のような絵しか出せない、解像度の低いコンデジの画像は満足できるものではなかった。
従って、今回の記事はデジ一眼で撮影した中望遠写真を多くチョイスしているので、何時もとちょっと違ったアングルの写真が多いと思う。

余計な話はここまでにして、ブナの森の雪質はかなりクラストしているので、直ぐにアイゼン歩行に切り替える。
シャキシャキと雪面を噛むアイゼンの音を響かせて、取り付きの急な斜面を登っていく。

786m峰の手前の雪庇上から朝日を浴びた月山が望まれた。
例年のGWよりも雪が少ない印象である。
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868m峰の手前では右から月山、姥ヶ岳、湯殿山と三役そろい踏みの見事な景色が見られる。
中腹を横切っている月山新道を走る車が、おもちゃの様に小さく望めた。
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ここで一番格好良く見える山が湯殿山
今日は山仲間のmorinoさん達が登る予定である。
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途中で南側にこれから登る石見堂岳が見えていた。
大越川支流の荒沢に雪崩落ちる急峻な山肌が迫力満点である。
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980m三角点峰(双滝山)の手前のブナ林。
石見堂岳までの行程はこの様に広い林間が多いので、BCエリアとして人気が高い理由が良く分かる。
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980m三角点峰の北側から初めて赤見堂岳の姿が見えた。
35mm換算135mmの中望遠の写真なので近く見えるが、実際はかなり距離がある。
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石見堂岳までの行程の中で、最大の難所がこの980m三角点峰の乗り越しである。
山頂に近づいて観察すると、山頂の雪庇は崩壊が始まっていて乗れないし、南側の雪庇は直下で雪割れが起きているのは過去の経験で分かる。
スキーの場合は雪庇崩壊に注意しながら急峻な東斜面をトラバースできるが、歩きの場合は滑落の恐れがあるので、迷わず西側の樹林帯を巻いた。
その巻く途中で、シノマタ沢支流北沢の奥に、3月に登った鍋森が見えていた。
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980m三角点峰を巻き終えて振り返る。
難所を過ぎて一安心と言ったところ。
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荒沢に落ち込む急峻なヒメコマツの林立する尾根を見下ろす。
この時、平野部では雲海となっていた。
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次の1011m峰の登りが、標高差50mながら、ピッケルが欲しい程の急登で、固い雪面にキックステップで後続用に深い足場を切りながら登った。
 
この先は緩やかなアップダウンが続く広い尾根を辿る。
ブナの疎林なので、四周に広がる景色は常に得られて気分爽快。
背後に月山を眺めながら、快適な登りが続いた。
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1050mの平頂から石見堂岳に続く広い雪堤を見る。
スキーゲレンデを思わせる斜面で、ここを滑ったら気持ちよさそうだ。
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湯殿山の左手、品倉山の奥に鳥海山が顔を出してきた。
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東には寒河江ダムの人造湖:月山湖の青い水面が見下ろせる。
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標高1150m付近の登り。
背後の月山の姿がかなり遠ざかってきた。
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山頂のだだっ広い頂稜を南に辿ると、山名の由来になったと思われる、大きな石が目印の石見堂岳山頂に着く。しかし大石を取り囲む様に既に灌木藪が出ていて、多少の藪漕ぎでその場に立った。

山頂の少し西側が好展望地になっていて、そこから朝日連峰の主稜線が一望できる。
手前の尾根が下山する予定の小桧原川右岸尾根である。
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左から大朝日岳、中岳、西朝日岳のアップ。
大朝日岳の下が竜ヶ岳。
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南東には蔵王連峰が霞んで見える。
左手の双耳峰は雁戸山。
この日は先週の三体山に比べて空気が湿っている様で、あまり遠望が利かない。
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三角形の頭殿山の背後に吾妻連峰が遠望できる。
中景、一番左手の山頂が少し白くなった山が大頭森山。
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石見堂岳の頂稜西端は、赤見堂岳の大展望地となっている。
この場所から眺めた赤見堂岳が一番優美で、均整がとれた山容に見える。
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赤見堂岳の山名の由来を調べてみたがよく分からなかった。
国土地理院の三角点の点の記においては、明治39年に最初の測量が行われていて、その点名は『赤見堂』であった。
おそらくマタギが山中を闊歩した時代から、今と同じ山名で呼ばれていたのであろう。
間違っているかもしれないが、自分なりに山名の由来を考察してみると、赤見は積雪期に朝日を受けて赤く輝く姿を言っていると思う。
この山は寒河江市方面から眺めると、寒河江川の果てに、冬場は真っ白い屏風状の障壁として見えるのである。
そして堂の意味は、ネットで漢字検索すると、『表御殿 、広く高い土盛り。また、台地。』『堂々=りっぱで威厳のあるさま。』と出てきた。
この言葉の組み合わせこそ、正に赤見堂岳そのものの山容を表していると思う。

石見堂岳から高差で90m下るが、途中の低木帯はかなり藪っぽくなっていた。
そこから広い雪堤を1355m峰まで一気に登る。
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1355m峰直下から見た赤見堂岳。
稜線上は灌木が出ているため、左手の斜面の雪を拾って登った。
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途中の雪稜から石見堂岳を振り返る。
この付近で大きい熊の足跡が稜線を横切って、西側に向って続いていた。
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赤見堂岳の山頂直下の登り。
この位置から見た月山は緩やかな三角形の整った山容に見える。
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そして少しの藪漕ぎで赤見堂岳の山頂に到着。
すばるぅさんの足の下あたりに二等三角点があるはず。
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山頂から眺めた朝日連峰。
障子ヶ岳に南下する稜線の西側は完全に灌木藪が露出している。
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山頂から見た小朝日岳、大朝日岳、中岳、そして西朝日岳
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東側に岩峰のエズラ峰を従えた、朝日連峰の北鎮:以東岳
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真西には八久和川を挟んで高安山が近い。
険しい灯明岩の岩壁が迫力満点。
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摩耶山の東面の雪は離森山から眺めた時より、かなり落ちてしまい岩場がむき出しになっている。
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直ぐ北隣の離森山
山頂に着く前に、離森山方面からスノーモービルの騒音が聴こえていた。
未だにスノーモービルの入山自粛処置を無視して走行する不届き者がいるようである。
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月山をバックに山頂で記念写真。
ここでゆっくり休憩して昼食を食べた。
試しに湯殿山に登っているmorinoさんに電話したら、先方も湯殿山山頂で食事をとっていた最中であった。
みどぽんさんパーティは既に滑り降りていった後だとか・・・
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この日は微風快晴に近い山日和で、山頂で休んでいてもさっぱり寒さを感じなかった。
こんな素晴らしい山頂を貸切なんで、とても贅沢な話である。

下りも長いので、そんなに長居をしてもいられず、大井沢桧原地区に向けて下山を開始
写真の左手に伸びる緩やかな尾根を下る。
しかし稜線上は灌木が出ているので、雪のついた東斜面を巻きながら下っていった。
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この斜面、横沢の出合付近まで標高差450mのフラットな雪面が続いている
BC好きなら涎が出そうな斜面であったろう。
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1360m地点で以東岳の大観を見るパーティの面々。
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1327mのジャンクションピークは藪が出ていたので、北斜面を巻いて標高1300m付近の東尾根に出る。
そこから赤見堂岳を振り返る。石見堂岳から見た印象とはかなり異なる。
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1327mのジャンクションピークの東尾根は大桧原川と小桧原川に挟まれた尾根で、ヤセ尾根部分が少ないために、登降がしやすい印象を持っている。
2002年に歩いた時は、下部のブナ林には薄い踏み跡がついていて、太いブナには大正年間の切りつけも見られた。

尾根の下降の途中、月山湖の背後に葉山が望めた。
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赤見堂岳の山頂からは主稜線に重なって、背景に埋もれるように見えていた障子ヶ岳であったが、ここでは急峻な東面スラブの存在が良くわかる。
左手の低い山が紫ナデで、その背後のピークが寒江山。
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大桧原川支流トツサカ沢を見下ろす。
尾根筋だけブナが並んでいる様が面白い。
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午後の光に輝く雪面。
右手の高い山が高倉山。その左手に大桧原山、一番奥に以東岳が望める。
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1216m峰から1190m峰の間に広がる馬場平
ガスられたらリングワンデリングしてしまいそうな平らな地形が続く。
夏場には猛烈な笹薮になっているのかもしれない。
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1190m峰の手前で休憩。
ここが赤見堂岳の勇姿が拝める最後の地点となる。
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1126m三角点峰(中嶺)から概ね三方に分岐する尾根を間違えると大変な目に合うので、ここは地形図を読んでルートを決める。
しかし現地に行くと、自然に目標の下る尾根に引き込まれる感じであった。
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標高1000m付近まで下ると、雪が腐ってきてアイゼン歩行では厳しくなったため、各自持参したカンジキを装着する。
見晴らしの良い場所では、寒河江川右岸の山々が直線的に連なっているのが望めた。
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下りの途中、石見堂岳を振り返る。
2年前に登降した小桧原川左岸尾根がよく見える。
中腹のヤセ尾根のところはズタズタに雪庇が崩壊しているようである。
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穏やかだった尾根も標高750m地点から雪割れが激しくなってくる。
こういう場面に慣れていないメンバーのために、深くステップを切って足場を作った。
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しかし670m地点でついに雪が無くなった場所にでた。
薄い踏み跡があるので藪漕ぎにはならないが、下を向いた根っこがでているので、滑り落ちない様に下るのは注意が必要だった。
その踏み跡の周りにはイワウチワの花が咲いていて、一服の清涼剤の役目をはたしてくれた。
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雪が消えた地点を振り返る。
この後はツボ足で下った。 
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何とか雪を繋いで607m三角点峰(下桧原山)までたどり着くが、ここからの下りは左右の尾根とも中途半端に雪が切れて苦労しそうな感じに見える。
仕方なく一旦南側の広い沢の源頭に出るが、そこを巻こうにもクラックが随所にあるので巻き切れない。

そこで安定した雪面を選んで、その小沢を一気に駆け下りた。
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大桧原川の左に農業用の用水路がある事は分かっていたが、今は深い雪に埋もれてその存在が分からない。
しょうがないので適当に歩きやすいところを川の下流に下り、最後は工事現場の法面を登って桧原集落へつながる車道に出た。

そこから寒河江川を渡り、デポした車に戻ったが、橋の上からこの日一日我々を見守ってくれた霊峰:月山が優しく見えていた。
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今回で4回目の赤見堂岳登山であったが、毎回充実した達成感を与えてくれる山である。
しかし豪雪地帯の大井沢をしてこんな状況なので、今年の雪解けの速さには改めて驚いた。
この後、道のない雪山を歩ける期間は限りなく短いと感じてしまった。

歩行距離17km、累積標高差1200m。体力的にはあまり疲れを感じなかった。
体調不良で この日不参加だったマスさんが来れなかった点だけが残念だった。

GPS軌跡です。(クリックで拡大)
akamidou

動画です。