週末ごとに雨の天気が続き、山に入れなくて悶々とした日々が続いている。
この週末も東北の太平洋側は台風の影響による東風が入り、奥羽山脈は雨が予想された。
こんな時は日本海に限りなく近い山域がヤマセの支配下から外れ、快適な登山ができる場合が多いので、雲っていたら花を見ながら歩けばいいさ、と気楽に考えて西鳥海の笙ヶ岳に向かった。

【 7╱30 笙ヶ岳(1635m) 山形・鳥海山 】
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前夜は夜まで鳥海山一帯は雨雲がかかっていたので、朝早く登ると雲の中を歩くと予想し、自宅は朝6時半の遅い出発となった。

大平山荘前の駐車場のトイレの近くにはノハナショウブが群生していた。
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山荘に隣接した鹿園で少しだけ鹿と遊んでいく。
小鹿が沢山いて可愛かった。
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夏山シーズンには吹浦登山口の駐車場は満車になる事が多いが、曇りの天気予報が幸いして6台分ぐらい空きスペースがあった。

前夜の雨で岩が濡れて滑りやすい伝石坂の急坂を登っていく。
湿度が高いので汗が滴り落ちる。

低木帯にはツルアリドウシの花だけ咲いていた。
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灌木帯まで登ると眼下に大平山荘が見えてくる。
深田久弥が初めて鳥海山に登った時は、鳥海ブルーラインは存在せず、吹浦から延々歩いて大平まで登ったとの事。今では楽に日帰りできる鳥海山だが、昔は遥か遠くの奥深い山だったのである。
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岩場の展望所まで登りきるとガスが切れて庄内平野が望めた。
ここからは登山道沿いに花が途切れない行程が続く。

しかし最近刈り払いが入ってしまったので、花の量は極端に減っている。
普通は道沿いにずっと咲いているハナニガナも僅かしか咲いていなかった。
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以前、通信反射板が設置されていた場所にはヤマハハコが群生している。
蜂が忙しなく飛び回っている。
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清水大神と呼ばれる湿地のところからニッコウキスゲが出てくる。
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小さな水たまりの傍にイワイチョウが花盛りであった。
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涸れ沢のとよのところで休憩をとる。
登り初めの時間が遅かったので、上部には人影が見えない。

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腰をおろしてマスさんお手製のケーキ『マリアージュ』を頂いた。
サクランボのジャムの甘酸っぱ味がとても美味しく、すぐに平らげてしまう。
この標高まで登ると暑さは感じず、熱いコーヒーが旨かった。
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とよから先に続く草原はチングルマの群生地になっている。
花期には素晴らしい景観を見せてくれるが、今は花が終わり穂が風に揺れていた。
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でも窪状の最上部はまだチングルマが咲いている。
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ベニバナイチゴの濃い赤紫の花が出てくると、雪渓の残る河原宿は近い。
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河原宿と言うと湯ノ台口の中段にある台地を連想してしまい、吹浦コースに河原宿があると知る人は少ない。このところの猛暑で雪渓は一気に小さくなってしまったようだ。
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雪が融けた雪渓の脇にはウサギギクやアオノツガザクラ、ヒナザクラ、コイワカガミが多く咲いていた。

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ヨツバシオガマも未だに健在。
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長坂道の三叉路に出る。
新山や外輪山は東から圧し掛かってくる雲に覆われて見えない。
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ニッコウキスゲは終盤。
でも雪解けが遅かった場所はまだ新鮮な花が咲いている。
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三峰の登りはガスで視界が利かない。
三峰の北斜面はチングルマの大群生地であるが、花は終わって花穂になっていた。

急坂を登り切って三峰の山頂に着く。
そこからの下りはトウゲブキ、ハクサンシャジン、ハクサンフウロが咲きみだれる道となる。
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ハクサンシャジンが咲くと、山は盛夏の時期を迎えたと感じる。
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二峰の鞍部付近でガスが晴れた。
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ミヤマリンドウは空の青さを映しているように濃紺である。
盛夏の山になると高山植物は紫と黄色の花色が多くなると感じる。
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庄内平野と湧き上がる雲。
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シロバナトウウチソウの花は終盤。
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笙ヶ岳本峰の小さな登りが終わると、山頂台地全体が花園になっている山頂に着く。
こんな花数が多いクルマユリは初めてみたかも。
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トウゲブキの花は大きい。
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ハクサンフウロも終盤で、傷んでいない花を見つけるのが大変だった。
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ミヤマホツツジは可愛らしい見かけと違い毒草である。
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夏場に二度咲きするハクサンイチゲ
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ハクサンイチゲのアップ。
風が吹く中で花を撮影する時はシャッタースピードを場合によっては1╱6000秒まで早くすると被写体ブレが少ない。
但しその場合はISO感度を800ぐらいまで上げ、絞りは出来るだけ開放に近く設定する。
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沢山の登山者が休憩している山頂でおにぎりを食べた。
腰を下ろした場所から万助小屋が眼下に望める。
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庄内平野と弧を描いて伸びる日本海の海岸線。
1600mと言う高度差を正に時間できる山頂であった。
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時折ガスが去来する中、往路を戻る。
二峰と三峰の鞍部付近に咲くチングルマ。
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三峰の山頂まで戻ったところで、急に新山方面の雲が切れてくれた。
そこからしばらくは素晴らしい稜線漫歩である。
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長坂道三叉路付近のニッコウキスゲ。
背後は新山と外輪山。
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新山が見えたので、御浜まで行ってみる事にする。
オオバギボウシは咲きはじめ。背景は鍋森。
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ニッコウキスゲが多く咲く鳥海湖分岐付近まで新山が見えていてくれ! と思いながら先を急ぐ
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しかし思惑は見事に外れ、鳥海湖分岐まで行くと新山も外輪山も再び雲に覆われてしまった。

振り返ると歩いてきた笙ヶ岳が一望できた。
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御浜に近づくとチョウカイアザミが増えてくる。
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改修工事が行われている御浜小屋が近づく
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今年は湖面の雪がなかなか融けなかった鳥海湖も、猛暑によって何時ものような夏山の佇まいを見せている。
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御浜の吹浦口分岐まで行って休憩をとった。
すると再び新山の雲が切れてきたので、ここから河原宿に直接下る予定を変更し、また長坂道の三叉路へ戻る。

でも結果的に新山の雲は飛ばず、その険しい姿を再度見せてはくれなかった。
本当は新山を鳥海湖を入れ込んだ写真を撮りたかったが、結果はこれ。
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三叉路からは時間が遅いのでほとんど人に会わない静かな山歩きを楽しめた。
展望所のところで水分補給の休憩をとり、伝石坂の急坂に備える。

上部の灌木帯のところから飛島と大平山荘、そして以前登った観音森が一望できた。
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この日、笙ヶ岳に来た本当の目的は日本海の岩ガキを食べたかったからである。
昨年は食べていなかったので、今年は外せないと思っていた。

国道7号の道の駅鳥海に隣接する魚店で一個700円の岩ガキを食する。
甘味があって最高に美味しい。
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岩ガキだけでは物足りないので、酒田港の海鮮どん屋とびしまへ行って、久しぶりに海鮮丼(980円)を食べた。10種類以上の具がのってこのお値段は激安であるし、とても美味しい。
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今回はハードな山歩きではなく、軽いハイキング的な小旅行気分なので、海鮮丼の味噌汁を小鉢に変えてもらい、代わりにかに汁(290円)を注文した。
これは大正解。海鮮丼とはまた違った日本海の幸を充分満喫できた。
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満足してお店を出る。
一日ゆっくり遊んだせいで、午後5時半を回っていた。
飛島航路の定期船とびしま越しに酒田港を眺める。
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この後、最近できた高速規格の酒田・余目道路を初めて走行してみるが、これは信号が多くて失敗。
砂越から松山経由で帰った方が遥かに早いと感じた。

しかし毎度思う事だが、鳥海山は花に関しては東北随一と感じる。
庄内の方が誇りに思うのは当然の山なのである。

今回は一般コースなのでGPS軌跡はなし。
花の撮影をメインで歩いたので動画もありません。