9年ぶりに山形県鮭川村の与蔵峠に行ってきた。
以前はマスさんに車を出してもらい、大芦沢登山口から羽根沢登山口までV字型のルートを縦走したが、昨年8月に最上地方を襲った豪雨被害で、羽根沢温泉から羽根沢登山口まで車の通行ができない。
そのため今回は大芦沢登山口から与蔵峠までピストンするコース採りにした。

【 11/4 与蔵峠(約630m) 山形・弁慶山地 】
大芦沢登山口~白猿の滝~大滝~モリアオガエルの沼~羽根沢分岐~与蔵沼(往復)

紅葉ラインは標高500m付近まで下がっている模様のため、冬枯れの高山は避けて、ブナの黄葉が楽しめる与蔵峠を選んだ。
この峠道はブナの美しい森が堪能できるため、仙台から遠い場所にも関わらず、気に入って何度も足を運んでいる。

大芦沢登山口までの林道は10月まで伐採作業が行われ、平日は通行止めになっていたらしいが、11月に入ると作業は終わり、林道終点の大芦沢登山口まで車が乗り入れ可能となった。
しかし藤九郎沢の千年カツラへ行く林道は現在も通行禁止で、役場に確認したら行かない方が良いと言われた。
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今回ご一緒するのはmaronnさん、うめさんマスさん
山形組はモンキィさん、tammyさん、まゆさんの計6名。

モンキィさんの到着が遅れていると少し心配していたら、林道でタイヤがパンクして、スペアタイヤに交換していたらしい。今の車はスペアタイヤが常備されておらず、オプションで購入したらしいが、それが役立ってしまった。登山で林道に多く入る方はスペアタイヤは必携と強く感じた。

登山口から紅葉が美しい大芦沢川沿いの道を歩きだす。
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道の右手に苔の繁茂した小滝が流れ落ちていた。
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昨年8月の豪雨で一部崩落したと言われる登山道は完全に復旧され、危ないところは一切ない。
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雲の流れが激しく、陽の光が雲に隠れたり、差し込んだりを目まぐるしく繰り返す。
大芦沢川右岸は崖地が多い険しい地形が続く。
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途中、ムキタケやナラタケを採りながらのんびり歩く。
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登山道の奥にまぼろしの滝と呼ばれる幾つかの滝が現れる。
対岸に落差130mの細い流れの湯沢の滝が見えてくる。
木々が邪魔して滝の全貌が見られる場所はなかった。
写真は滝の一番下部の部分。
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青空の下、日差しが出ると、森はオレンジ色に輝く。
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上流に大滝がある沢は、木橋が落ちてしてしまい、現在はアルミ梯子と、水の流れの中に置かれた足場板を使って渡渉するようになっていた。
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足場板を渡っている最中、上流を見る。

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沢を渡った先で道は二手に分かれる。
左に折れて白猿の滝を見に行く。
その途中の倒木にナメコがたくさん生えていた。
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この一帯はブナの黄葉の盛り。
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まぼろしの滝の中で一番近づいてみられる白猿の滝。
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左俣の上流には夫婦滝が見えている。
この滝は以前、二条の滝だったそうだが、流路が変わって右手の滝が流れ落ちなくなってしまったらしい。
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渡渉点近くの分岐に戻り、左折してジグザグに急坂を登ると、大滝が俯瞰できる展望台に着く。
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ここまでキノコを探して採りながら歩いてきたので、すでに2時間経過していた。
休憩してマスさんお手製の和菓子『りんご』を食べる。リンゴの味がする上品なお菓子だった。
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細く急な尾根筋の階段を登っていくと、下流の風景が見える場所があった。
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やはり晴れて日差しがあるブナの黄葉は美しい。
こんな黄色い世界を見られるのは年に数日しかないのである。
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湯沢の滝の最上部が左手に少しだけ見えている。
谷筋から流れ落ちている感じはないので、滝の水源は湧き水なのであろう。
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一等三角点が設置されている与蔵山方面の尾根筋を見上げる。
その標高ではブナの黄葉は終わっていた。
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大滝沢?左岸尾根の紅葉を望む。
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大芦沢コースは展望が開ける場所はほとんどなく、ブナの森をとことん楽しむコースだ。
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大滝上流域の山々が見えている。
あの山を越えて北へ群界尾根をたどると弁慶山につながる。
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細い尾根筋を登りきると、ブナの原生林の登りに変わる。
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この日、一番綺麗だった紅葉ポイント。
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林床にたった一輪だけイワウチワが咲いていた。
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ここのブナ林って山形県内では鳥海山の鶴間池と、同等の美しさを競っていると思う。
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太陽が顔を出す度に立ち止まって写真を撮ってしまうため、全然先に進まない。

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空が青空ならいいのにと贅沢な悩み。
邪魔な低木や笹薮がないすっきりした林床のブナ林が続く。
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標高520m地点にあるモリアオガエルの沼。
ここでアラレ混じりの雨が降ってきた。
季節はもう11月。日本海側の山ではいつ時雨ても可笑しくない。
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標高602m独標を北側から巻くように登山道は続いている。
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標高602mピークの東側の崖地は崩落崖であろう。
崖下は凹地になっていて、サワグルミなど周りのブナ林とは植生が異なる。
故に紅葉の趣も違って見えた。
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この付近はブナの黄葉も終盤。
葉が落ちて林下が明るく感じる。
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羽根沢登山靴分岐に着く。
ここを右折して少し歩くと与蔵沼がある与蔵峠は近い。
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鬱蒼としたブナの森の中に、静かな湖面をたたえる与蔵沼を見下ろす、風が弱いところで昼食をとった。
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与蔵峠は古くから山形県庄内地方と最上地方を結ぶ主要な街道であった。
その歴史は古く、陸奥の国府:多賀城と出羽の国府:城輪(きのわ)の柵を往来する官人達が利用されたと言われている。近世には通行を取り締まるための口留番所も置かれ、明治時代には最上川の舟運が出来ない天候時の補完的な要路として位置づけられていた。
大正中期に美人の湯として有名な羽根沢温泉が開湯されたとき、庄内の人々はこの峠を越えて湯治に訪れたと言われいる。

9年前のブログ記事でも与蔵沼の伝説を記載したが、忘れていたので、再びここに転機する。
大芦沢・羽根沢と飽海郡(あくみぐん)とのさかいに与蔵峠というところがある。むかしは庄内越えの要路であった。峠の頂上には直径200メートルほどの沼がある。深さは底知れず、あるとき村の若者がいかだをつくって沼の真ん中にいき、深さを計ろうとしてなわ一把(わ)におもりをつけて下ろしたが、底にとどかなかったという。この沼には主の大蛇(だいじゃ)がすんでいるといわれているが、大蛇にかかわる物語が伝えられている。
むかし、この峠で炭焼きをしていた与蔵(よぞう)という若者がいた。ある秋の日のこと、与蔵は鎌に入れるたきぎ背負いをしていた。汗を流したせいか、のどがからからに乾いたので、筧から流れてくる水に口をつけてごくごく飲んだ。ふと見ると、筧に小さな魚が二尾流れてきていた。与蔵は喜んでその魚をとらえ、焼いて昼飯のおかずにした。ところがどうしたことかのどが乾いてき始めた。筧の水を続けざま飲んだが、それでもたまらない。与蔵は大急ぎで沢に下りていき、沢水に口をつけて飲んだ。
その日も暮れ、夜中になっても与蔵が帰らないので母親が心配して、村人たちと迎えに峠に上った。炭小屋のところまでくると、そこには満々と水をたたえた大きな沼になっていた。みんなびっくり仰天したが、それよりも与蔵はどうしたものかと、みんなで探しまわったが、見つからない。
母親は気ちがいのようになって、「与蔵やーい、与蔵やーい」と叫んだ。すると、今まで静かに月光にかがやいていた沼の水面が急にざわめいて、大きな渦がもり上がったと思うと、その中から、にゅとかま首をもちあげた一匹の白い大蛇が、真っ赤な口を開けて「おーい」と返事をした。
 与蔵はあまりに喉がかわいたので、谷を堰き止めて沼をつくり、そこに入り水を飲んでいるうちに、大蛇のすがたに変わってしまったのである。大蛇は一回すがたを現しただけで、いくら呼んでも二度と現れなかった。母親は泣く泣く村に帰ってきた。
そこからこの沼を与蔵沼、峠を与蔵峠と呼ぶようになったという。それから後、この峠を通る人は時々白い大蛇が沼で遊んでいるのを見かけるという。

鮭川村ホームページ「村の伝説」より 出典「鮭川村史(集落編)」

今回はいつものコンビニおにぎりではなく、まゆさんに頂いたサンドイッチと、マスさんお手製の『栗蒸し羊羹』。温かいコーヒーを飲んで冷えた身体が少し温まる。
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時間的に東へ2.5km離れた与蔵山を往復する余裕はなく、往路を戻る。

登りと下りで同じブナの森の風景でも少し違って見える。
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途中、単独で与蔵山を往復した男性登山者のほかは、誰にも会わない静かな森歩きが楽しめた。
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日の入りが速い季節。
午後の弱い日差しは色温度を下げてくれて、黄葉がより赤い色合いに見えてくる。
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幅が狭い急な階段を一気に下り。
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大芦沢川沿いの道を歩いて車に戻った。
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帰路、舟形町の若あゆ温泉で熱いお湯につかりほっとする。
その後は渋滞を上手く回避して家に戻った。

GPS軌跡。
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