2008年の5月に鶴間池を訪れたことがある。
残雪とブナの新緑、そして荒々しい岩壁の姿を見て感動した記憶が今も残っている。
南北250m、東西130m、水深約4mのこの池の成因は西側の斜面が地滑りを起こし、その凹地に水が溜まって出来たものとされている。北側の凄愴な岩壁は約44万年前の噴火時の溶岩末端だとか。
この池が一番賑わうのは秋の紅葉期で、積雪期、残雪期は急な地滑り斜面の登降時に滑落の危険がありエキスパート向けだ。

【 5/4 鶴間池(815m) 山形・鳥海山 】
大台野北側の駐車地~ウツタテ~長野台~山雪荘~下道入口~三等三角点・上大台~鹿ノ俣川右岸の廃道~池沢渡渉点~鶴間池避難小屋~鶴間池~奥鶴間~鶴間池上部の池沢渡渉点~勘助坂~ノゾキ~下道入口~山雪荘~長野台~ウツタテ~大台野北側の駐車地

大台野から鳥海山の外輪山を見ると傘雲がかかっている。
山上は強風が吹き荒れているようだ。
晴れの天気予報だったのに上空は雲が去来する。
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大台野北端の最初のカーブ地点に車を停めて登り始める。
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しばらくは残雪と舗装路が交互にでてくる車道を歩く。
写真はウツタテ付近。
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車道をショートカットできるところは迷わず近道する。
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一段登った長野台付近から外輪山を見上げる。
雲がかかり天気は悪化傾向にある。
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湯ノ台コースの尾根を見る。
新緑のラインは1000m付近か。
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荒木川手前の直線部分。
晴れて穏やかに見えるが風が強くなってきた。
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荒木川橋の右手に赤いトタン屋根の小屋が見える。
帰宅後調べてみたら山雪荘とい小屋だった。
誰が管理しているのかは不明。

荒木川橋を渡って右手に鶴間池へ下る下道の分岐がある。
標識は雪に埋もれているようで確認できなかった。
ここでアイゼンを付け、ピッケルを持って急坂の下りに備える。

下道には全然赤テープなどの目印がない。
積雪期にまったく歩かれていない事が分かる。
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新緑が始まったブナの森を歩く。
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鶴間池の台地に下る斜面は地滑りの崩落崖が連なる。
以前下った時は夏道が出ていたので難なく下れたが、今回はこの冬の積雪の多さから、下までずっと恐怖感を感じるほどの雪の急斜面が落ち込んでいた。
スキーなら下れるが、マスさんが歩いて下るのは危険過ぎる。

仕方なく835m三等三角点ピーク(点名:上大台)下のコンタラインが広いところを狙うが、出だしの傾斜がきつ過ぎて下降を諦めた。

そこから更に南へ道のない尾根を下る。
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標高740m地点まで下り、ようやくブッシュを利用して下れる斜面を見つけた。
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地形図の破線ルートに近づこうと思うが、急な雪面をトラバースせねばならないため、一気に比高90m(標高650m付近まで)下り、横移動できる場所を探して直登→斜登高を繰り返す。
この標高まで下ると新緑真っ盛りだ。
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雪が消えた場所を見ても破線ルートの道筋は見当たらない。
歩きやすいところをルートファインディングしながら進む。
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鹿ノ俣川左岸の崩落崖が望める。
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傾斜が緩いブナの森に出て少しほっとする。
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小尾根を越えた先はまた急斜面の斜登高になる。
マスさんのために深くキックステップして足場を固めて進みため時間がかかる。
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この写真を見ると斜面の傾斜角がよく分かるだろう。
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ようやく急斜面から解放された。
写真の右端付近が下道のある斜面。
完全にツリーホールがある急な雪面状態だった。
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地滑り下部はブナの森が広がっている。
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鶴間池避難小屋へ行くために池沢を渡渉する。
この時期、単管で作られた簡易橋は足場板と手すりが無く、アイゼンを付けた足裏で歩くのは危ないと判断。しかし池沢を渡った対岸は高さ1.8mぐらいの雪壁になっているため、ピッケルで足場を作って乗り越えた。
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鶴間池避難小屋はもうすぐ。
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トチノキ?の巨木が迎えてくれる。
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明るい新緑のブナの森が続く。
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森に抱かれた隠れ家の様な鶴間池避難小屋。
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鶴間池。
池に流れ込む池沢は湧き水の沢なので、完全氷結することはないといわれる。
残念ながらここに着いた時、外輪山は雲の中に隠れてしまった。
また風が強いため、水面が波立っていた。
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マタフリ滝。
下部が残雪に隠れているので大きな滝に見えない。
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芽吹いたばかりのブナの森。
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池の東岸。
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池に積もった雪は割れ初めている。
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マスさんを入れてもう一枚。
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東岸を通って北側にある奥鶴間に向かう。
西側には地滑りの崩壊崖が連なっている。
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地滑りの底には小さな凹凸がたくさん存在している。
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北側にある奥鶴間と呼ばれる第二の池。
こちらは未だ雪に埋もれて僅かに溶け始めたところだ。
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奥鶴間東岸から西側を見る。
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ブナの森のアップ。
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奥鶴間の西側、風が弱い場所を見つけて休憩をとった。
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おにぎりを食べた後、マスさんお手製の和菓子『さくらみち』をいただく。
里の桜は終わっているが、新緑のブナの森には合っていた。
2022050437さくらみち

鶴間池上部の池沢の渡渉。
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鶴間池を見下ろしながら勘助坂の取りつきを目指す。
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勘助坂は無雪期に二つのハシゴ場と、ロープ場が連続する難路だ。
前回は途中から雪が消えた夏道を登れたので、そんなに難所に思えなかったが、今回は完全に超急な雪の斜面を登らねばならない。
マスさんのために2~3回キックステップを行い、足場を固めてから一歩一歩登る。
一部、ピッケルを握らない手も雪面に差し込んで、四つん這いでキックするところもあった。

少し傾斜が緩いところで崩落崖の写真を撮るが、その他の場所は余裕がなくて一枚もシャッターを切れなかった。
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勘助坂上部の最後の工程は、岩場混じりのブッシュ帯に活路を求め、木につかまりながら登り切った。
稜線に出た地点。
この背後に避難小屋管理の方が積雪期の登降用に使うロープが、木に巻き付けられていた。
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登り切った地点の少し南側にある勘助坂の降り口。
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ノゾキから鶴間池を見下ろす。
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風が強いことを物語るブナの奇形樹の森を抜け、雪に埋もれた車道に出る。
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下る途中、東方を見ると二ッ山の左奥に丁岳が霞んで見えていた。
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鶴間池の再訪は気が抜けず、想像以上にハードだった。
急峻な雪上歩行に慣れない登山者は危険過ぎるので行ってはいけない。
ロープ持参で懸垂下降をした方が安全確実に下れると思う。

GPS軌跡。
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