10日は秋田県横手市西部にある保呂羽山に登ってきた。
出羽丘陵と呼ばれるこの一帯の山に登るのは初めてだ。

【 4/10 保呂羽山(438m) 秋田・出羽丘陵 】
保呂羽山少年自然の家~登山口~表参道合流点~波宇志別神社~保呂羽山~伐採植林地~車道出合~登山口~保呂羽山少年自然の家

夏山シーズンはトイレと駐車場が完備された保呂羽山登山口まで入れるようだが、残雪期は保呂羽山少年自然の家を起点に登られている。

羽後町から久しぶりに出羽グリーンロードを走行して保呂羽山少年自然の家へ。
建屋の奥に目指す保呂羽山が見える。
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一応、職員に駐車の可否と入山口を確認すると、掲揚台のところから入山すると教えてくれた。
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カラマツ林に入り、小沢を渡って一段登ると、広い作業道の様な山道に出る。
その先、東斜面が伐採され高曇りの空の下、奥羽山脈の山々が見渡せた。

写真は真昼岳(左)と女神山。
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白岩岳(左)と和賀岳。真ん中に羽後朝日岳が見えている。
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北東には秋田駒ヶ岳と岩手山
こんなに景色が見えるとは予想していなかったので、立ち止まって山座同定を楽しんでしまった。
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少し急な坂を登った先に保呂羽山が見えてきた。
左のスギが生えているピークに波宇志別神社が建っていて、三角点は左端の高点だ。
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道は良く整備されていて歩きやすい。
307.2mの三角点(点名:鍋倉)は確認しないで通り過ぎてしまった。
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雑木林を緩く下っていくと、左手に使われなくなったバンガローが建っていた。
以前、保呂羽山スキー場が存在したと言うが、その名残か。
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廃バンガローの先から残雪が出てくる。
この先で林道が合流。右折して緩く下っていく。
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旧県道と言われる舗装道路に合流。
西側に保呂羽山登山口の駐車場とトイレがある。
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保呂羽山の説明看板。
山岳信仰の聖地と記載している。
山名の由来は諸説あるようで、宮城や岩手にも同じ名前の山が存在する。
保呂羽の保呂はアイヌ語の「ポロ(大きい)」)が「ポロ」になり、「ワ」は「イワ(神聖な山)」を意味し、「ポロイワ」=大きな神聖な山が「ホロワ」に転化したと推定される。
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登山口の標識。
東山腹にある国土交通省秋田河川国道事務所の無線中継所への道を途中まで登る。
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ここが表参道との合流点。
看板には保呂羽山が自然環境保全地域に指定された山と記されている。
故に植物等の採取は厳禁の山だ。
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この駕籠立場の看板のところから急坂に変わる。
藩政時代に佐竹藩の殿様はこの場所で駕籠を降りて、歩いて登ったと言われる。
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下居堂(おりいどう)。
額には普賢堂と書かれているが、ここは女人禁制時代の遥拝所であった。
昭和40年にようやく女性の入山が解禁されたとか。
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下居堂の広場から遥か上の急坂を登っていく登山者が見えて驚いた。
すぐに鎖場が出現するが、重く太い鎖なので上手く使えない。
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この岩は子守石と呼ばれている。
子守に夢中の女性が結界を越えてしまい、神の怒りに触れて石になってしまったとか。
子供を背負っている女性の姿にはどう想像を働かせても見えなかった。
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南斜面はブナの巨木が生える超急斜面。
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急坂が一服すると一夜盛の看板がある平場に出る。
何でも尾根の右側が亀田藩、左側が久保田藩の領地で、領地を広げようと久保田藩が峰と峰の間に土を盛り、一晩で峰続きにしたと言われる場所だった。
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岩割りの木。
岩を割って成長したブナ?が生えている。
樹皮を見るとブナには見えないが・・・
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急な尾根の上部はイワウチワの群生地になっているが、まだ蕾が多かった。

やがてスギ並木が出てくると立派な本殿の波宇志別神社(はうしわけじんじゃ)に着く。
延喜式神名帳(えんぎしき じんみょうちょう)にまとめられた中では、秋田県内最高位の神社という。
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二等三角点の設置された山頂は神社の裏から西へ進む。
左右は切れ落ちたブナの生える細い頂稜は庄内地方の経ヶ蔵山に雰囲気が似ている。
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北側(稜線左側)の急な斜面を見下ろす。
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少量ではあるがイワウチワが咲いていた。
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頂稜で一か所だけ鳥海山の勇姿が望める場所があった。
稲倉岳を外輪山とした北西面の爆裂火口の様子が良く分かる。
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山頂の二等三角点。
山名の標識はない。
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その変わりに少し下のミスミソウの説明看板が設置されていた。
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秋田県においてミスミソウはレットデータで絶滅危惧Ⅰ類に分類される希少種だ。
しかし保呂羽山に関しては花巻市の万寿山や、経ヶ蔵山と同様に、SNSのみならず、ウェブ上で群生地があることを明かされているため、本ブログでも咲いている写真をアップする。
咲いている場所は尾根左右の超急斜面なので、歩き回ることは危険だ。
とるのは写真だけ。盗掘は厳禁で、末永く登山者の眼を楽しませる存在であって欲しい。
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大きな株は少なく、この大きさの株はこの場所だけだった。
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下山コースは随所にロープが設置された岩混じりの急坂がある。
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細尾根は旧羽広口分岐付近まで続く。
と言ってっも羽広へ下る道は踏み跡も定かでなかった。
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登山道が南側の斜面へ下ると、すぐに眺望が開けた広大な伐採地に出る。
スギの苗木が植林されており、木が伸びると景色は見えなくなるが、今はこの山一番の展望地と言える。カシバードで山座同定してみたら、一番右端の方が東光山で、左手の一番尖った山が日住山のようだ。この界隈の山は登っていない山ばかりなので、自信はないが・・・
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そして南西には再び鳥海山が姿を現した。
頂稜で見た時より日差しが遮られたため、陰影は薄くなっている。
左に見える台形の山は八塩山。この山にも登ってみたい。
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冷たい南東風を避けるため、伐採地の尾根を少し回り込んだところで、鳥海山を眺めながら早めの昼食をとる。

マスさんお手製の「苺ミルクマフィン」。
ボリュームあるケーキで、食べ応えがあった。
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ジグザグに伐採地を下る。
下山ルートが表示されているので分かり易い。
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下ってきた尾根の直下まで伐採が広がっていた。
まあ切り株を見ると太いスギ林を伐採したことが分かる。
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林に入ったT字路の所で左右どちらかに進むのか分からなくなった。
山勘で左折し、緩やかに下って行くと旧県道に飛び出た。
U字溝から溢れた雪解け水が舗装道を洗う。
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キクザキイチリンソウがたった二輪だけ咲いている。
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旧県道の左手に坂部の境塚の標柱と説明看板があった。
亀田、久保田両藩の境界の紛争が絶えなかったために、幕府の裁定によって一応の決着を見たが、その後も紛争が止まず、文化10年にようやく妥協点が見つかり、この地点から5つの境塚を築いたとされる。
しかし見た目には何処に塚が築かれたのかよく分からない。
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登山口に戻り、後は保呂羽山少年自然の家まで往路を引き返す。

往路で霞んで見えなかった焼石連峰の姿がようやく確認できた。
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午後から曇りの予報だったが逆に晴れてきた。
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このカラマツ林を抜けると少年自然の家の駐車場は近い。
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短時間で登れる低山ながら、意外に変化に富んで面白い山だった。
山の価値は標高では測り知れないとつくづく感じた。

GPS軌跡。
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